ただ一途に愛する──。
 それだけのことが、なんと美しい──。
 そして、なんと哀しいさだめか──。
 せめて時が違えば、あるいは──。


 空を見上げる。
 真っ青に澄んだ、どこまでも行けそうな高い高い空。
 初春。
 例年ならばまだ少し肌寒い季節であるはずだが、今年はゆったりと暖かい。
 春はすでに始まっている。
「シルフたちの気まぐれか……それとも、アインハザードの機嫌が良いのかもな」
 ミスリル製の鎧を身に纏ったエルフの青年は、空を見上げたままふと呟いて、口元に笑みを浮かべた。
 腰に提げた長剣、そして左腕に通した盾を見れば、彼が騎士の称号を持つ者であることが想像できる。盾に刻まれたエヴァを象る紋章が、それを証明していた。
 そんな彼が立つグルーディンの村の外れは、すぐ近くにオルマフム族との戦場があることなど忘れてしまいそうなほど、静穏な空気に包まれている。
 こんな場所に足を運ぶのは、冒険者はおろか、村の者でもそうはいないだろう。
 だが彼はこの静かな場所が好きだった。
 聞こえるのは、海から運ばれてくる風が揺らす、草花の音だけ。
 ──が、今はその音に乗るように、一つの足音も。
「あの……さっきパーティーを募集していた人かな?」
 聞こえたのは、弾むような少女の声。
「ああ。そうだけど」
 振り向く彼の目に飛び込んできたのは、太陽のような笑顔と、陽の光を反射する明るい緋色の髪。
「一緒していいかな? 一応、戦士……ウォーリアの称号はもらってるんだけど」
 その笑顔に目を奪われた。
「まだ島から出てきたばっかりで、こっちのこと、よくわか……」
 気が付けば、その髪に触れていた。
「……手が早いのかな?」
 彼女が苦笑する。
「ぅあ!? ご、ごめん!」
 慌てて手を引く。頭に血が上るのが分かる。
 そんな彼を見つめて、彼女は眩しそうに目を細める。
「私、メリシアナ。友達からはメリスって呼ばれてる。……あなたは?」
 そして、右手を差し出す。
 彼は躊躇うようにその手を握り替えし、赤く染まった顔で彼女を見つめ返した。
「俺は……セリオン」

 二人の物語が、再び始まる──。
 
 

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