「んん? アニア、あんた今日、なんか変じゃない?」
 エアルフリードは鋭い。あまり気付かれないよう、最小限の変化に収めたつもりだったのだが。
「そ、そう?」
 アニアネストはわずかな動揺を隠すように、そそくさとその場を立ち去ろうとする。
 しかし、朝食を取りに来た一階の酒場では、大した逃げ場があるわけもなかった。
「う〜ん……ああっ! そっか!」
「!?」
 離れて座ろうとしたアニアネストを凝視し、エアルフリードはポンッと手を打つ。
「いつもより露出が少ないっ!」
「人を変な趣味みたいに言わないで!」
 持っていた朝食のトレイをテーブルに叩き付けるようにして、思わず突っ込んでしまった。
 エアルフリードが不満げに、指先でフォークを揺らしながら口を尖らせる。
「えー? だって、いっつも『胸元ぼーん!』『太ももズバーン!』じゃない」
「わけの分からない表現しない! いいでしょう。たまには気分を変えたいのよ」
「ほほー。ふふーん」
 白けたようなジト目を向けてくるエアルフリードを無視し、アニアネストは椅子に腰掛ける。
 たしかに今日の彼女の服は、普段の服とは違い、とても落ち着いた感じのデザインだ。上着は肩を露出するほどに開いてもおらず、胸元も革紐でラフにではあるが、しっかりと閉じられている。スカートにもスリットなどは入っていないし、タイトなデザインではあるが、足首まで隠す長さがあるものだ。
 普段からの彼女の雰囲気があるため、気付かれにくくはあるが、たしかに普段とは違う。
 照れのためか、頬に朱を差しながら、怒ったような表情で朝食に手を付けるアニアネスト。その同じテーブルに、自分の食事を持ったライがやってきた。
「どうしたんだ? 機嫌悪そうだな」
 不意を衝かれたアニアネストは、口に入れた小さなトマトを思わず丸飲みしてしまう。
「……っ!」
「だ、大丈夫か?」
「……え、ええ……」
 顔を背けてどうにかトマトを飲み下し、向かい合わせに座ったライを上目遣いにちらりと見る。
「?」
 小首を傾げる彼。
「……お、おはよう」
「ああ。おはよう」
 赤い顔のアニアネストに、ライは笑顔で応じる。
「…………」
「?」
 何かを待っているかのように、そのまま自分を見つめるアニアネストに、ライは再び首を傾げた。
 その時。
「ほらほら、ライくん。ちゃんと服を誉めてあげなきゃー」
 二つ向こうのテーブルから、エアルフリードの野次が飛んできた。
 アニアネストは稲妻のような速さで振り向き、睨み付ける。
 ライはきょとんとしてエアルフリードを見やり、ついでアニアネストを見つめた。
「服……?」
「そそ。『あなた以外に見せたくなぁい☆』って、おとなしめの服になってるのよ」
「えっ!?」
 再びエアルフリードとアニアネストの間に、視線を往復させるライ。
 堪えきれず、アニアネストが椅子を蹴って立ち上がった。
「ちょっとエアルフリード! 余計なことを言わないで!」
「本当のことでしょうが? いやぁ、あのアニアちゃんも男で変わるのかぁ」
「このっ……!」
 顔どころか、全身を真っ赤にしながら、アニアネストが右手に魔力を宿す。
 そんなからかい甲斐のある仲間に、エアルフリードはウインクしながら小さく舌を出した。
 次の瞬間、宿の一階の窓が全て吹き飛び、扉から入ろうとしていたポエットがその扉ごと街路に転がされるという、はた迷惑この上ない事件が起きることになるのである。

「これ、誰が弁償するんです?」
「プリシラの魔法じゃ直せない……よね。やっぱ」
「はぁ……また盟主から叱られるぞ、これは」
「ポエットちゃんが面白い格好してるんだけど……」
「はうぅ〜」

 
 

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